第23章 素敵な衣装ですね
『…………』そわそわそわそわそわ
「あー…えっと、春人 くん?」
仮に。マネージャーが すぐ事務所に連絡を入れ、正規の衣装を持って来てもらうよう手配していたとしよう。
しかし、ここから小鳥遊事務所までの距離を考えると、とても間に合わない。
私ならどうする?
『…………』ぶつぶつぶつぶつ
「…こいつ、どんどん分かりやすい奴になってねぇか」
リハは、もう衣装なしで挑むか。いやしかし…小鳥遊事務所は、お世辞にも大手事務所とはいえない。IDOLiSH7も、デビューしたばかりのホヤホヤアイドル。そんな彼らが適当な服でリハーサルは、良くない。
何が良くないって、周りへの心象が良くない。
デビューしたばかりで、もうリハでは手を抜く事を覚えたのか。なんて言われてしまうのがオチだ。
『…………』あれでもないこれでもない
「………」
やはり、リハーサルから衣装を着て臨むべきだ。しかし、一体どうやって…
局内にあるかもしれない、良さそうな衣装を借りるか?いや。7着も彼らのイメージカラーに合う衣装が揃っている可能性は低い。
他のグループに、リハの順番を代わってもらう?いや。1番 芸歴の短い彼らが、すでに決定されている出順に口を出すのはまずい。それこそスタッフや御偉方に、悪い印象を植え付けかねない。
『………私なら、どうする…』
「落ち着いてくれない?」
『え……あぁ、私ですか?』
「キミ以外は落ち着いてるよ」
天の声で、一度思考がストップする。
彼の落ち着いた声色を聞いて、自分がいかに深いところまで没入していたのだと気付いた。
『すみません。忘れます。余計なことは』
私は TRIGGERのプロデューサーであり、IDOLiSH7のプロデューサーではない。
自分の仕事に集中しなければ。
「忘れるって?嘘ばっかり。今もキミの顔には書いてあるよ。
IDOLiSH7を助けたいって」