第23章 素敵な衣装ですね
飛び込んで来たのは、七瀬 陸だった。
楽屋中をぐるりと見回した後、泣きそうな顔で呟いた。
「あれっ マネージャー、ここじゃないんですか…?オレ、てっきりここにいると思って…」
『…あ、小鳥遊マネージャーと、和泉さんなら…もう、そちらに戻られたと…思うのですが…』
私がしどろもどろになっているのには、理由があった。
天、楽、龍之介も、衣装に身を包んだ陸に釘付けになっている。
「あぁっ、じゃあ入れ違っちゃったのかも!っていうか、すみません!ノックもしないで、オレ、」
『いや、それは全く…構わないのですが…』
私も その “ 下半身 ” から、どうしても視線を外す事が出来ない。
なぜなら、彼が…
とんでもなく短い丈の、半ズボン姿だったからだ!
しかも、普通の半ズボンではない。言ってしまえば、トランクスくらいの丈しかないのだ。
これではまるで…一昔前の、真夏によく現れる小学生男子ではないか。
「「「………」」」
『素敵な衣装ですね』
TRIGGERが固まっていたので、私はなんとか言葉を投げかけてみたのだが。どうやらその単語は、ミスチョイスだったようだ。
彼は、みるみるうちに顔をカァーっと赤くした。
そしてリンゴのようになってしまった彼は、お騒がせしてすみませんでした!!と叫ぶと、たちまち立ち去ってしまったのである。
「お前…。さすがに あの言葉はないわ」
『すみません。テンパってしまって。
つい脳内で、麦わら帽子と虫取り網を 彼に装備させてしまったら、思いの外 似合っていたものですから』
「それはやめてやれ」
「春人くんは悪くないよ!俺達なんて、固まってただけなんだし…」
「いや、あの姿で不意打ち食らったら ほとんどの人間は固まるでしょ。
でも明らかに、衣装の手配ミスだろうね。
小鳥遊事務所側か、仕立て屋側か。どちらに原因があるかは分からないけれど」
『………』
チラリと掛け時計に視線をやる。
彼らのリハの時刻まで、そう時間は残されていない。