第23章 素敵な衣装ですね
「へぇ、そうなんだね!そこでもやっぱり、プロデューサーの仕事してた?」
『…はい。あなた達とは系統の違う、女の子アイドルをプロデュースしてました。
当時の私は、その…色々あった後で、とにかく自暴自棄になっていて。様々な事を諦め、ぶつけようのない怒りに囚われ、出口の無い迷路に迷い込んでいて。
そんな、情けなくて どうしようもなかった私を。彼女の歌が、救ってくれたんです』
自分の心を、大切な人に触れてもらう感覚。長らく忘れていた。
この、こそばゆくて 照れ臭くて、でもやっぱり嬉しい そんな感覚。
「そっか…。その子は、きっと優しい子なんだろうね。俺もいつか、その歌が聴きたいな。
それで、彼女に お礼を言いたい。
春人くんが辛い時、助けてくれてありがとう。手を差し伸べてくれてありがとうって。
その子がいなかったら、今の君は、いなかったかもしれないだろう?俺達も出会えていなかったかもしれない。
だから、とても感謝してるって 伝えたいんだ」
『……はい』
龍之介らしい、優しさ溢れる言葉の数々。なのに私は、はい。としか答える事が出来ない。
こんなにも、嬉しいのに。
こんなにも、伝えたい気持ちがあるのに。
全部胸でつかえて、喉から上がってきてはくれない。
こんなにも もどかしいのも、随分と久しぶりだ。
「…また、龍は、恥ずかしいことベラベラと…」
「なに。楽、泣いてる?」
「泣いてねぇよ!!」
たしかに涙は見えないが、見方によっては 目が赤い気もしないでもない。
「…ボクも、そのアイドルの歌を聞いてみたいと思うよ。
名前は?キミが以前、プロデュースしていた女の子の名前」
『あぁ…彼女の名前は、ミ』
バァァン!!!
「マネージャーーーー!」
私達の楽屋に、またしても唐突に来訪者が現れたのであった。