第22章 私にも、出来るでしょうか
『その3人と私が…鉢合わせしてしまったんです』
「えっ…!」
「大変じゃないですか!そんな修羅場?を、どう切り抜けたんです!?」
心底どうでも良いはずなのに、私達はソファから身を乗り出した。
「な!?終わったー!って思うだろ?俺達も、これはマズイって思ったんだけどな…」
「3人の女性が、春人くんの顔をじっと見た。春人くんの言葉を待った」
「でも、そんな窮地を…プロデューサーは、たった一声で切り抜けたんだ」
私は、春人に詰め寄った。
「一体…どう、切り抜けたんですか?」
『それは…。満面の笑顔で、こうです。
“ あっはは! ” 』
「え……ほ、本当に、それだけですか?」
『はい。最高の笑顔を見せただけです』
「本当だよ。プロデューサーは、ただ笑っただけ。すると、周りが勝手に絆されたんだ。
“ あぁ 別にいいや。例え彼がどんなタイプの人間だろうと、私は彼が好きだ ” ってね。
これこそが、完璧に計算し尽くされた上に成り立つ “ 愛情 ” だよ」
『なんだか人聞きが悪いですね。私は、たしかに愛されるよう 努力はしてますが…』
駄目だ。てんで参考にならない。このやり方は、彼だからこそ出来る技だ。そんな器用な真似、私には真似出来ない。
マネージャーもきっと、そう感じているに違いない。
あからさまに肩を落とす私達を見て、春人は気を使ったのだろうか?意外にも優しく声をかけた。
『えっと…。ですから、私のやり方はおすすめしませんが…参考程度の話くらいは、出来るかもしれません。
落ち着いて話をするなら、別室へ行きませんか』
「わぁっ!ありがとうございます!」
「ぜひ」
「おい、べつに わざわざ他行かなくてもいいだろ。ここで話せば」
「ふん、別室だってさ。やらしい」
『あなた達がそうやって邪魔してくるから移動するんだって、どうして分からないのか不思議ですよ。私は』