第22章 私にも、出来るでしょうか
「あっ、どうぞ。良かったら、これで拭いて下さい」
『あ、どうも ありがとうございます。でも、』
春人に、ポケットティッシュを差し出すマネージャー。しかし、彼はそれをやんわりと断っている。
そんな態度に違和感を持ちつつも、私はTRIGGERの面々に向き直る。
「あの…先輩方にこんな事を言うのは失礼かと思いますが、それでも言わせて下さい。
ここまで盛大に カレーで口を汚している人を横目にして、どうして誰も教えてあげないんです?あなた達、少し酷くないですか?」
「ち、違うよ、一織くん、それは誤解で」
「イジメですか?もしかして自分達のプロデューサーをいじめてストレスを発散してるんですか?」
「違うって言ってるでしょ。少し落ち着きなよ、和泉 一織」
「って、お前も黙ってねぇで早く真相を教えてやれよ」
『え?あぁすみません。正直、あなた達が責められているところを見るのが楽しくて』
「正直過ぎだろ」
仲間からいじめ?られているというのに、春人は相変わらず毅然としている。
そして、その顔には相変わらずカレールーが。
「あなたも!早くその口元を拭いて下さい!
(可愛くて)気が散るんです!」
いい加減に見ていられなくて、私はついに自ら机の上のボックスティッシュを掴んだ。手早く2.3枚それを手に取ると、彼へとにじり寄る。
『あぁ、やめて下さい!これは拭かないで』
「は?どうしてです?まさか、わざと口元を汚しているわけじゃないでしょう」
「お、正解」
楽の言った “ 正解 ” の意味が理解出来ないうちに、この楽屋に客が訪れる。