第22章 私にも、出来るでしょうか
「どうした?一織。楽屋に帰って来るなり、難しい顔して棒立ちになって」
「…べつに、何でもありませんよ」
「分かった!さてはお前、さっきTRIGGERの楽屋挨拶の時、緊張しまくってて何も喋れなかったからへこんでんだろ!ははっ!
大丈夫だって!TRIGGERなら、そんくらいで怒ったりしないから安心しろ、な?」
「……兄さん」
「そっか…一織、緊張しちゃってたのか!でもその気持ちオレも分かるよ!だから次頑張ろう!どんまい!」
「…七瀬さんも…。
もうそれ、見当違いも甚だしいので 少し黙っててもらえますか」
「!!
うぅ、三月…一織が怒った…」
「陸 ごめんなぁ。短気で無愛想な弟でごめんな」
小さな兄の後ろに、震えながら身を隠す陸。どうしてこの人達は、こうも可愛いのだろう。可愛い生き物と可愛い生き物の共演は、なぜこうも私の心をときめかせるのだろうか。
「なぁなぁ、いおりん」
「はい?」
後ろから肩をつんつんと突かれ、振り返るとそこには環がいた。
「さっきさー、いおんりん、めっちゃ えりりん…じゃ なくって、TRIGGERのプロデューサーの事、見てなかったか?」
「え」
正直、意外だった。
自分の行動を、他の誰でもない環に見られていたという事実。他のメンバーならともかく、彼が気付くとは…。
「なぁって!見てたよな!こうやってさぁ、じーーーーって、見てたじゃんかぁ!なんで?なぁ なんで?!」
「な、なんですか、その圧は…!そんなふうにぐいぐいこっちに来ないで下さいっ!
べつに私は…ただ、その…少し、彼の事が気になっているだけで!」
「!!!!」
あまりにグイグイと詰められたので、つい本音を漏らしてしまう。すると何故か環は、ひどくショックを受けた様子だ。