第22章 私にも、出来るでしょうか
【side 和泉一織】
ここ半年ほどの、TRIGGERの躍進には目を見張るものがあった。勿論、あの3人の努力と才能があればこそだ。そこに大手事務所の後押しが加わり、彼らは今の地位を手にした。それは分かっている。
しかし、何か違和感がある。
ここ最近のプロデュースは一風変わったものが多かった。アプローチを変えたのだろうか?今までのやり方が間違っていたわけではないのに、八乙女事務所は何故このタイミングで そのような賭けを?
自分なりに、当たりをつけて考えをまとめた結果。ひとつ、思い当たる事があった。それは…
中崎 春人の存在。
彼がTRIGGERのプロデューサーとして就任した時期こそが…約半年前なのだ。
私が彼を意識するようになったのには、きっかけがある。
先日、ゲスト出演させてもらったラジオ収録での出来事。スポンサーとラジオパーソナリティが話している小話を、耳に挟んだ。
「昨日、TRIGGERの天くんと仕事をしたよ」
「あぁ!彼いま、ちょーっと凄いですよね」
「ノリにノってるねぇ、彼。勢いあるよ」
「凄いといえば、あのプロデューサー。彼もなかなか逸材だと思いません?」
「そうそう!俺もそれ思ってたんだよね!」
「ですよね。何が凄いって、あの気配り!ぶっちゃけ、うちのスタッフなんより全然周り見えてるんですよ」
「あぁいう子が下にいたら、楽だろうねぇ」
彼の話を耳にしたのは、その一度だけではない。
現場で耳を澄ませば、幾度となく中崎 春人の名前が聞こえてくるのだから、意識をするなという方が無理な話だ。