第22章 私にも、出来るでしょうか
それなりに打ち解け、わいわいと会話を交わすIDOLiSH7とTRIGGERだったが。
ただ1人、全く言葉を発さない男がいた。それは…
和泉 一織。
彼は、先輩アイドルへの挨拶は仲間に任せ。じっと、ただじっと…私だけを見ていた。
『……』
(気まずいな。あの凝視…タマちゃんじゃあるまいし。私に何か話したい事があるのか?よく分からない)
こちらを値踏みするような。心の中を探るような、そんな視線。いよいよ耐えられなくなって、こちらが下を向いた その時。一織は初めて口を開いた。
「マネージャー、そろそろ」
「あっ、そうですね!」
その内容は、TRIGGERへの挨拶を切り上げるよう マネージャーへ進言したものだった。
歌声を耳にした際にも感じたが、高校生にしては落ち着いている声だ。爽やかで涼しげで。
兄の三月とは、随分と系統が違うな。など考えていると、彼らは この楽屋を後にした。
完全に扉が閉まるまで手を振っている龍之介。そして、そのままのポーズで私に言った。
「良かったね」
『……一応聞きますけど、何がですか?』
「そりゃお前。あいつらと話が出来て良かったな って意味だろ」
『だから!私は別にっ、』
「妬けるね」
ぽそりと呟いた天を、思わず振り返る。
すると、聞き間違いではない。とでも言いたげに、また同じ言葉を繰り返した。
「妬けるね」
『…いや、あの』
「あぁ。妬けるな」
「うん。妬ける妬ける」あはは
『あなた達が、私を揶揄いたいのだという事はよく分かりました。全く…何が面白いのか、理解出来ませんね。
私は、そんなあなた達を見事にスルーしてカレーを食べます!』
「あ。春人が拗ねた」
私は、プラスチックスプーンを覆っているビニールを、勢いよく破った。