第22章 私にも、出来るでしょうか
慎重で、思慮深い。視野を広く持ち、限られた情報で、的確な答えを弾き出す。それを得意としているのだろう彼は、私と似ている。
私などに構っていないで、早く本題のTRIGGERに挨拶して帰ってくれと。そんなふうに考えた時、予想外の助け舟が入る。
「オイコラおっさん!なーにを絡んでんだよ!他所様のプロデューサーに!」
「いやいや、べつに お兄さんは絡んでたわけじゃ」
「思いっきり絡んでたじゃねぇか!あの絡み方は、焼酎一升瓶を1人で空けた時の絡み方だったって!」
「それだけ飲んだら、絡む余裕なんか無くなって、トイレに籠ると思いますよ?さすがに…」
「そうかよ!じゃあ頼むから今からでもトイレに篭ってきてくれ」
「…ミツが酷い事言う…」
私を救ってくれたのは、和泉 三月。くるくるとよく回る舌から発せられる言葉は、聞いていて心地が良いくらいに快活。
三月からこってりとしぼられた大和は、さらに楽からも叱られているようだ。
私と違い、楽は大和と馬が合うのかもしれない。歳が近い事も起因しているのだろう。側から見ていて、楽しそうに会話を弾ませている。
その隙に、私は すっと後ろに下がる。
すると、次は壮五が龍に話し掛けに近付いた。
「大勢で押し掛けてしまって、すみません…。
IDOLiSH7がデビューして、今日が初めての TRIGGERさんとの共演だったので。どうしても、皆んなで挨拶に伺いたかったんです」
「そんなふうに言ってくれて、凄く嬉しいよ!
7人でデビュー出来て、本当に良かったな」
「!はい、ありがとうございます!」
突如として生まれた、この良識人フィールド。まるでマイナスイオンでも発生しているのかと思うくらいに、私に癒しを与えてくれるのだった。