第22章 私にも、出来るでしょうか
陸の隣に立っているのは、環だった。TRIGGERへの挨拶に来ているはずなのに、彼の顔はまるでそんなふうではない。
「………」キラキラキラキラ
『……っ』
今にも えりりん!!とか叫んで、抱き着いてきそうな雰囲気だ。私には、彼のお尻に付いた尻尾が見える。そしてその尻尾は今、ぶんぶんと振られているのだ。
私は、彼が やらかさないうちに、先手を打つ事にした。
『こんにちは四葉さん。お久しぶりです。今日もお元気そうですね』
「!!ぁ…。えっと、
……中崎サンモ、ゲンキそーで…ヨカッタ です」
環は どうやら私の意図に気付いて、調子を合わせてくれる。…彼なりに頑張ってくれたのだろう。
しかし シュンとしたその様子は、私の中に少しだけ罪悪感を募らせた。
そこへ話しかけてきたのは…
“ 彼 ” だった。
「あれ?中崎さんとタマは たしか友達同士なのに、なんだか随分と他人行儀なんですね」
『…立場上、公私混同を控えているだけです』
「へぇ。俺には、どーも他意が見え隠れするんですよねぇ。あなたを見てると…」
『他意?どういう意味でしょう』
「例えば…タマとあなたが、何か重要な秘密を共有していて それを周りに悟らせないようにしてる…とか?」
二階堂 大和である。相変わらず、眼鏡の奥にあるその瞳は 何を考えているのか読み辛い。
やはり、私は この男が苦手だ。
そして、なぜ苦手か。その理由も私の中で明確化出来ている。
これはきっと、
同族嫌悪だ。