第22章 私にも、出来るでしょうか
天や楽の言った通り、私がIDOLiSH7に会いたいというのは紛う事なき事実だ。
彼らの歌を またこの耳で直接聞きたいし、出来る事ならお近付きになっておきたい。
が…。そんな私に比べて、天はどことなく乗り気でないような気がする。
IDOLiSH7との共演は、彼にとって喜ばしい事ではない?もしくは、何か不都合があるのだろうか。
だからと言って 天の性格上、私情で仕事を選り好むような発言はしないのだが。
だからこそ、分からない。天が今、何を考えているのか。何かを隠しているのか。
今日は、歌番組の事前収録。気楽 という訳ではないが、生放送よりは緊張が緩んでしまうのは仕方がないだろう。
急なアクシデントが起こったとしても、生より当然 対処がしやすいからだ。
「お。今日のロケ弁は、オーベルジーニのカレーか」
「美味しいよね。俺もこれ好きなんだよな」
「プロデューサー、カツとエビフライ。どっちがいい?」
『余ったもので良いですよ。
皆さんは食べていて下さい。私は先に衣装の確認をしてきますので』
時間の針は、ちょうど昼の12時を指していた。漂うスパイスの香りに、腹の虫が反応しないように腹筋に力を入れる。
「リハまで時間あるんだから、確認は後でいいだろ。先に食えよ」
『もし手違いで、違う衣装が届いてたらどうするんです。早目にやっておくべき事は、先にやっておかないと』
「楽。プロデューサーとご飯を食べたいのは分かるけど、あまり我儘を言うべきじゃないよ」
「なっ!!」
「皆んなで食べた方が上手いのは分かるけどな!ほら楽、我慢して3人で食べよう」
『おや、楽はそんなに私と一緒に食事がしたいんですか?
いいですよ。それなら少しだけ待っていて下さい。すぐに確認を終わらせますから。
そしたら、トンカツとエビフライを分け分けしましょうね』
「〜〜〜っ、お前ら、最近 俺をいじり過ぎだろ!分け分けとか言うな!女じゃねえんだから、シェアとかするか!」