第22章 私にも、出来るでしょうか
「千葉志津雄?」
『!!』
いつのまにか後ろに立っていた天が、パソコンの画面を覗き込んで呟いた。
きっとノックはしたのだろうが、集中していた為に気付けなかったようだ。
「…ふぅん。今度は何を企んでるの?」
『人聞きが悪いですね。私はただ、いつか彼とTRIGGERが共演する日に備えて情報を集めてただけですよ』
「はっ。もう俺達と千葉さんが共演するのは決まってるみたいに言うんだな、お前は。相手は銀幕のスターだぜ?」
『何を他人事のように言ってるんです、楽。その未来を掴めるかどうかは、貴方の双肩に掛かっているんですよ。そりゃもうどっしりと』
「すげぇ肩凝りそう」どっしり…
「はは。まぁでも、たしかに春人くんの言う通り、TRIGGERの中で1番演者としての露出が高いのは楽だからな。俺も期待してるよ」
「龍まで俺の肩に重荷乗っける気かよ。勘弁してくれ…」
「ふぅん。自信無いんだ?」
「お前なぁ!相変わらず嫌な言い方しやがって。
無いわけねぇだろ。せいぜい振り落とされないように、俺の肩に掴まっとけよ。銀幕のスターまで直行で連れてってやる」
「あー熱い熱い」
楽の頼もしい言葉に、密かに胸を熱くする。
が、いつまでもそんな未来の話に興じている場合ではない。
私は、内手首に付けた時計の文字盤に目を向ける。
『そろそろ現場へ向かいましょうか』
「あれ?随分早いね、今日は」
龍之介が首を傾げる。
私がどう切り返そうか悩んでいると、全てはお見通しだと言わんばかりに 天が代わりに説明する。
「今日はプロデューサーお気に入りのIDOLiSH7との共演だからでしょ」
『……』
「へぇ…だから気合い入れて、いつもより早く現場入りしたいと。春人お前、意外と可愛いところあるよな」
『……』
「そうだったのか…!それじゃ早く行こう。少しでもIDOLiSH7と話が出来ればいいな、春人くん!」
『……』
私は無言のまま、パソコンの電源を落とした。