第21章 キミがいてくれて、良かった
「どうあっても、認めてもらえないのですね。ですが私は、たしかに貴方の中に トップアイドルとしての、Lio としての片鱗を見」
『仮に…。私がもしも、Lio だとしても』
「!」
『貴方には、隠し通すと思います。
もし、自分の重要な秘密を誰かに話すとしたら、まずは…
自分にとって、一番 大切な仲間に 打ち明けると思いますから』
支配人に対し 初めて口にした、強い拒絶の言葉。
こう言われてしまっては、彼ももう引き下がるしかないだろう。
「そう ですか。分かりました。もうこれ以上の追求は無駄なようです」
『…私からも質問してもよろしいですか?
どうして、貴方は Lio を見つけたいんです?そのご友人の為ですか?それとも、
まさか貴方も…もう退いた人間を 強引にでもまた表舞台に引っ張りあげたいという考えの持ち主なのですか?』
明らかに、プロデューサーを纏う空気感がピリリと引き締まるのが、ここからでも感じ取れた。
「…その、友人がね。自慢するんですよ。毎度毎度、会うたび話す度に。
自分は Lio の歌を聞いた事がある。羨ましいだろう。お前は音楽好きとして、ありえへんくらい損してんでって!
正直言うてね、むっちゃ悔しいんですよ。なんで自分もそん時 東京おらんかったんやって!むっちゃ羨ましいんですよ!」
『あ、えっと…それは まぁ…お気の毒です』
そういえば、この支配人は 感情が高ぶると大阪弁になってしまうらしかった。
「あ…し、失礼しました。
とにかく、私が Lio を見つけたその時は お願いしようと思いまして。
どうか 1曲だけで良いので、私に貴女の歌を聴かせてもらえませんかと。
それが、彼女を見つけたい理由です」