第21章 キミがいてくれて、良かった
「その男と、私の共通の認識は…
Lio が表舞台から去ったのは、“ 不調 ” に起因している。というものです。
中崎さん。たしか貴方、喉の具合が あまり良くない。と仰っていましたよね。
それに、MAKAのダンスと、貴方のダンスは非常に近しい。
友人の調べによると、Lio はMAKAのバックダンサーとして下積みをしていたらしいのです」
『………』
「もう 私の言いたい事、お分かりになりましたよね。
共通点が多過ぎるのです。貴方とLio は」
そんな、事が…ありえるのか。
まさか。プロデューサーが…
「貴方は、Lio ですか?」
Lio ?
『ふふ、あはは…!
あ、いや すみません。あまりにも支配人が、愉快な事を仰るので、つい』
「……おや、そんなに愉快でしたか?」
『ええ。私が Lio だなんて、愉快以外の何物でもありませんよ』
松葉杖をついていない方の手で、思わず口元を覆う。こうでもしないと、声が突いて出てしまいそうだった。
プロデューサーが、Lio かもしれない。そんな、降って湧いたような仮説。頭が真っ白になるボクを置き去りに、2人は互いに 真意の見えない会話を続けていた。
『私は、見ての通り男ですよ』
「今の時代、見た目だけの話ならどうとでもなりますしね」
『そもそも、消えたがっている女性を追い回すなど…あまり褒められた趣味ではありませんね。
ご友人に、早々に新しい趣味を見つけた方が良いのではないかと お伝え下さい』
「それは私も常々、本人に伝えているのですけどね」
差し障りのない会話に見えても、互いの腹を探り合うような。異様な空気感が2人を包んでいた。