第21章 キミがいてくれて、良かった
想像でいいから。と、支配人はプロデューサーに答えを求めた。
あまり黙り込む事のない彼が、珍しく長考している。
『…多くの人の前で、ライブをして…もう満足してしまったのでは?』
それは、あり得ない。
Lioは、ボクと同じ人種だと踏んでいる。そんな彼女が、たった一度のライブで満足するはずがない。
良いライブが出来たなら、次はもっと上へ。どうすればもっと上へ行けるのか。ファンを満足させられるのか。そう考えて然るべき人物だ。
『もしくは…、どこか力を持った事務所に潰されたとか』
よく、“ 非凡と平凡は相容れない ” と言われるが。まさに、彼女は非凡な人間だった。
たしかに、Lioを手に入れる事に失敗した事務所は大打撃だろう。
彼女が他事務所からデビューし、多くの人の目に触れる事態になれば… 自分の事務所所属のアイドルが “ 平凡 ” であるとファンに気付かれてしまう可能性すらある。
しかし、だからこそ多くのプロダクションは 彼女を手に入れようとやっきになるはすだ。
事実、楽の話ではライブの直後からスカウトが殺到していたらしい。
従って、プロデューサーの推理は…
「はは。的外れです。的外れですよ、さっきからの 貴方の推理は」
『…想像で良いから。と言ったのは貴方ですよ』
「そうでしたね。失礼。
いや、実はですね…私の友人に、未だにLioを追い続けている酔狂な男がおりまして」
未だにLioを探している人間が、芸能界には多くいる事は ボクも知っている。
それにしても…支配人は、一体何の話をしたいのだろう。
ボクがそう思った時、同時にプロデューサーが切り込んだ。
『支配人も、お人が悪い。さきほどから何が仰りたいのですか?
言いたい事を、さっさと言っておしまいになれば良い』