第20章 出来ますよね。貴方達なら
「よく、その足であそこまで踊れたものね。信じられないわ」
『痛みますか?』
「全然」
よくもまぁ、言えたものだ。赤く腫れた患部は、そうは言っていない。
「と、とにかく!アンコールは無理ですよ!」
現場スタッフの1人が、無線で連絡を入れる。照明、音響スタッフ達にアンコールの中止を伝えようとしているのだ。
「待って下さい!ライブツアー千秋楽で、アンコール無しなんてありえない。
ボクなら平気ですから、早く準備を」
「しかしその足では…!今ここで無理をして、今後の活動に支障が出たらどうするんです!
あ、こちら現場です。この後に予定していたアンコールは」
ブツ
私は、スタッフの無線を取り上げ、通信を遮断した。
「なっ、…何をするんですか!」
『貴方こそ、何をするんですか』
凄い剣幕で、スタッフは私を睨み上げた。
「アンコールを取りやめて、早く天くんを病院にっ」
『その判断を下すのは、貴方ではない。私です』
私達のやり取りを、緊張の面持ちで見守る楽と龍之介。そして姉鷺と全てのスタッフ。更には支配人も、固唾を飲んで見つめている。
しかし天だけは、薄く笑っていた。
「あなたは…まさか、この状態の彼を、ステージに上げるのか?」
『…貴方はさきほど、“ 今後の活動に支障が出たら ” と仰いましたが。
“ 今 ” 無理をしなければ “ 今後 ” はありません』
「なっ、」
私は再び、天の前に膝をつく。そして、包帯を結び直す。
『やれますね。天』
「誰に向かって、言ってるのさ。やれるに決まってるでしょ。
だってボクは、プロだよ?」