第20章 出来ますよね。貴方達なら
全てをやりきったTRIGGERメンバーに、観客から拍手と歓声が贈られる。
「あーーっ、終わった!ヤバイな。最高!」
「うん。気持ち良い!皆んな、ありがとう!」
「………」
舞台袖へと帰ってくる3人。しかし、明らかに空気がおかしい事に気が付いたようだ。
「お、おい。なんだよ、どうした?」
私に問い掛ける楽だったが、私はそれを無視して天の腕を掴む。そして用意してあったパイプ椅子に彼を強引に座らせた。
「………」
「え?本当にどうしたの?春人くん?」
龍之介の質問にも答えないで、私は座らせた天の前に屈む。それから靴を脱がせる。
「ちょっと。何するの?まだアンコールが残ってるんだけど」
靴の後、続いて靴下も脱がせると、やはり足首には包帯が巻かれていた。
「ちょ、天!?あなた、その足どうしたのよ!」
「…まじかよ…っ!」
「天…え、嘘だろ」
姉鷺やメンバーは勿論、スタッフ達にも動揺が走る。
「大袈裟に騒がないで。これくらい、何ともないよ」
『いつからですか』
「だから、特に問題は無」
『いつからだと、聞いているんです!』
静まり返る、舞台袖。
誰もが、私と天の動向を見守っている。
「…はぁ。昨日の、アンコールの時から」
昨日。
と、いう事は、今日はこの足でずっと舞台に立っていたのか。
…信じられない。
私は包帯を外し、スタッフから受け取った氷嚢で患部を冷やす。
「一緒にステージに立ってた俺達ですら…気付けなかった」
「そうだよ天!どうして言ってくれなかったんだ!」
天を囲むようにして、2人は悔しさを滲ませる。
「べつに。言う必要が、なかったからだよ」
静まり返る舞台袖とは裏腹に、客席ではアンコールの声が、響き渡っていた。