第20章 出来ますよね。貴方達なら
ラストの曲が始まった。
完璧で、正確な音程とリズム。特にアップテンポなこの曲では、それらの良さが顕著に表れる。
聴いている者の体を、動かせてしまいそう。
豊かな表現力で、会場全体は彼ら色に染まっていく。
そして、長い間奏に突入。この曲の目玉である、彼らのソロダンスに入る。
まずは楽。そして、龍之介と続いた。
最後のソロは…TRIGGERのセンター。天による圧巻のパフォーマンス。
繊細かつ大胆。緻密に計算され尽くされた動き。指先の動き1つとっても、眩しいくらいに美しい。
『!!』
「…彼のダンスは、特に素晴らしい。さすがはセンターをやっているだけありますね」
なんと、いう事だ。
なんだ。どうして。
「? 中崎さん?」
固まる私を見て、背後から支配人が声をかける。
返事をしている暇なんてない。
近くにいた、TRIGGERを見つめ応援しているスタッフに大声で指示を飛ばす。
『今すぐに、氷嚢を用意して下さい!』
「え?」
急に肩を掴まれたスタッフが固まる。
『姉鷺さん!この時間からでも診てもらえる病院を探して下さい!』
「え?何?病院?」
私は、一体何をしていたのだ。
彼らを完璧な状態でステージに立たせる。それが私の仕事だろう!
『クソっ…!』
私の悪態の声は、爆音で鳴り響く伴奏で掻き消された。