第20章 出来ますよね。貴方達なら
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ライブツアー。千秋楽。
昨日の公演から言って、心配する要素なんて1つもなかった。
私は安心して、舞台袖から彼らを見守っている。
「2度と離れないように用意した鎖。
いつまで悩んでるの?
さぁ早く手を取って。
さぁ思うまま駆け出して。
分かってる。君が掴むのは」
「ボクの」
「俺の」
「差し出した手」
今となっては懐かしさすら感じる この曲。私が初めて彼らに提供した思い出深い曲だ。
それはもう、半年近く前の話だ。その時より、もっとずっとこの曲の完成度は上がっている。
成長しているのだ。歌が。TRIGGERが歌えば歌うほど、この曲は彼らのものになってゆく。
「もうすっかりこの会場の全てを知り尽くしたみたいですね。いや素晴らしい。堂々とした歌いっぷりだ」
『支配人、どうしてこちらに』
彼にはVIP席を用意しており、そこでライブを楽しんで貰っていたはずだ。
どうして急に、こんな裏に…
「いや、ここで聴くのも一興かと思いまして。お邪魔でしたら、席へ戻ります」
『いえ、問題ありませんので どうぞ』
私は言いながらも、ステージ上で歌うTRIGGERへ視線を戻す。
今のTRIGGERには死角など無い。どこから観て貰ったって、恥ずかしい部分などありはしない。
「ありがとうございます」
要望が聞き入れられたというのに、彼は全く嬉しそうではなかった。
それどころか TRIGGERには目もくれず、私の方をじっと見つめているのだ。
『??』
かなりの違和感を覚えたが、私は気にせずステージに集中するのであった。