第20章 出来ますよね。貴方達なら
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「お前ら全員、最高だったぜ!」
「楽しんでくれた?また俺達に会いに来てね!」
「ありがとう!!皆んな、大好きだよー!」
大阪公演初日は、大成功のままに幕を降ろした。
私も客席で観ていたが、完璧な仕上がりだった。私が要求したものに、ファンが求めているものに、彼らは100%応えてくれたのだ。
この分なら、明日の締め括りも問題なく臨めることだろう。
「あー…最高だったなぁ」
ライブで全てを出し尽くしたようで、楽は半ば放心状態で呟いた。
「あの支配人さんも、満足してくれたみたいで良かったよ!」
「信じられないくらい大阪弁が出てたね」
ホテルへ帰るまでの少しの時間を、控え室で過ごす私達。ライブが大成功だった分、他愛のない会話ですら よく弾む。
『元々あの方は、大阪生まれ大阪育ちですからね。仕事の都合上、方言は抑えているんでしょうが、感情が高ぶった時はタガが外れるようです』
私服に着替え終えた楽が、小さな更衣室から出て来る。
「龍が酔っ払った時に、沖縄弁しか話さなくなるのと同じようなもんだな」
「そうだね。うん、俺は支配人さんの気持ち分かるなぁ」
「なんにせよ、ボク達のライブを観て 感動してくれたって事でしょ。良かったんじゃない?」
龍之介と天も、すっかり着替え終わって メンバーが揃った。
『では、ホテルへ行きましょうか。明日の為にも、早く体を休めて下さい。連日のライブでお疲れでしょうから』
「優しいお前は、気持ちが悪いな」
『失礼な。私はいつだって優しいです』
朗らかに笑い合う、平和な時間。
私は、浮かれていたのかもしれない。
この時、もっと注意深く彼を見ていれば。
違和感を持てていれば。
明日、あんな事態には、陥らなかったのかもしれないのに。