第20章 出来ますよね。貴方達なら
「またそれか…。もう聞き飽きたよ。それよりお前も、他に目を向けてみたらどうだ?新進気鋭のアイドルがどんどん出てきてるぞ」
私は、さきほどまで見ていたTRIGGERの面々を思い浮かべて言う。
《断言したるわ。Lio を超えるアイドルは、おらん。これまでも、これからもや》
そこまで言われると、自分が彼女の生歌を聴けなかった事が悔しくて仕方が無くなってくる。
そんな嫉妬心を押し殺して、さりげなく話の軌道を変える。
「で?なんかさっき、手掛かりを掴んだって言ってなかったか?」
《それやそれ!あのなぁ、凄い事実が分かったんや!お前にも関係してる事やから、よう聞いてくれ》
「?」
《Lioはな…あのMAKAの元でダンスの経験を積んでたらしい》
「…MAKA」
なんてタイムリーなんだ。
さきほど、中崎のダンスを見て、彼女を思い出したところだ。凄い偶然もあったものだ。
《たしかMAKA、お前のとこの会場使った事あったやろ?だから取り急ぎお前に連絡したんや》
いや…偶然。か?
《なんでもええ。資料とか残ってないか?MAKAがそこでステージ立った時の、バックダンサーの名簿とか!》
まさか…MAKAと、Lio と、中崎 春人は繋がっている…?
《もしもし?おーい。聞いてるんか!》
まさか、な。
「すまんけど、バックダンサーの名簿まで残ってるわけないやろ?お役に立てんで申し訳ないなぁ」
《……大阪弁、出とるで。
お前、焦った時と最高潮に興奮した時、大阪弁出る癖治ってへんな。
んで!?何を隠しとる!?》
中崎 と Lio が同一人物かもしれない。と思ったなどと、恥ずかしくて口が裂けても言えない。
そもそも、性別からして違うのだから。
「うるさい。何も隠してない。他に用が無いならもう切るぞ。お前もな、過去に追ってた女の事なんて早く忘れろ!
俺はもう、前を見てるぞ。早速明日、楽しみにしてるアイドルのコンサートがあるからな。お前の相手をしてるほど暇じゃないんだ。じゃあな」
《あ!おい!ちょ待》
——ブツ
容赦なく通話終了のボタンを押す。
「……ありえへん。ありえへんやろ」
ホワイエから会場の方を見て、騒ついた心を落ち着けた。
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