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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第20章 出来ますよね。貴方達なら




「いや、…参ったね」


無意識で呟いてしまう。あまりに圧巻で、正直 背もたれに背中がくっついてしまったのかと思うほど 動きたくない。
いつまでも、この余韻に浸っていたい。


「ねぇ、君達…。彼は、何者だい?」


ついつい丁寧語を失念するくらいには、驚いた。


「はは。まぁ、初めて見たら そうなりますよね」


こちらを振り返り、八乙女が笑う。


「ボク達も、初めて彼の歌とダンスの技術を目の当たりにした時は、驚きました」

「彼なら、自らステージに立っていてもおかしくないのに…。でも 紛れも無い、俺達のプロデューサーなんです。不思議ですよね」


九条と十も、やはり分かっていない。


「いや、たしかに彼は歌もダンスもずば抜けてセンスがあるよ。でもね、彼が本当に凄いのは、そこじゃない。
そこじゃ…ないんだよ」


泡立つ肌を押さえながら、声を絞り出す。三人は、そんな私を見て首をかしげる。


「プロデューサーの…本当に凄い、所ですか?」


やがて、1曲丸々歌い終わった中崎がこちらへ歩いてやってくる。


『どうでした?』


メンバーは、それぞれ、思った事や感じた事を彼に伝える。
それを粗方聞き終えた中崎は、淡々と次の指示を与える。


『では、次はE席から見ていて下さい。私は、先ほどと全く同じパフォーマンスをします』

「は?なんでだよ。次は俺達の番だろ」


不満そうなメンバー。申し訳ないが、ここは私が口を出させてもらう。


「まぁまぁ、いいじゃないですか。それに…今のをもう1度 E席から見たら、きっとさっき私が言った意味、分かりますよ」

『??』


今度は、状況に1人付いてこれてない中崎だけが、首をかしげる。


「中崎さん」

『はい』

「彼らは私が、E席へ案内しましょう。
4ヶ月前、貴方が座ったあの席で良いですか?」

『それは、助かります』

「お安い御用ですよ。一刻も早く、もう1度貴方のパフォーマンスが観たいですから ね」

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