第20章 出来ますよね。貴方達なら
それにしても、異様な光景だ。
一端のプロデューサーの歌と踊りを、プロである彼らが眺めている。
しかし そんな考えは、音が始まればたちまち吹き飛んでしまうのだった。
『 ♫ 』
「っ、…!」
——何者だ、この男は。
引きずりこまれる。中崎の世界に。
のまれてしまう。中崎の世界に。
強引に、強制的に。彼と同じ景色を見せられてしまう!
歌もさる事ながら、ダンスも一級だ。豊富過ぎる、パフォーマンスアートのボキャブラリー。それを確実に実行し、魅せる事の出来る身体能力。こんなダンスは今までお目にかかった事が…
いや、ある。一度だけある。誰だったかあれは。たしか女性のプロダンサーで、今は海外に行ってしまった…、
!そうだ、思い出した。名前はたしか、MAKA!間違いない。彼のダンスは、彼女のそれに酷似している。
なんて…
美しい。もはやこれは、芸術だ。
「やっぱり、観るならS席だよな」
「伝わってくる躍動感が桁違い。まぁ、ステージから一番近い席だから、当然だけど」
「うん。出来る事なら、お客さん全員S席で観て欲しいくらいだ」
私の前の席に座った彼らが、口々に感想を述べているが…
どうやらまだ、分かっていないようだ。今のステージが、何故ここまで圧巻だったのか。何故ここまで躍動感に満ちていたのか。その、本質に。