第20章 出来ますよね。貴方達なら
—————
「やぁ中崎さん。久しぶりですね。またお会い出来て嬉しいですよ」
私は、早速やってきた彼に右手を差し出す。相変わらず、不自然なくらい綺麗な顔をした男だ。
『ご無沙汰しております。こちらこそ、今日から3日間 よろしくお願い致します』
全く間を置く事なく、手がこちらへ差し出される。線の細い、柔らかい手だ。
『紹介させて下さい。彼らが、TRIGGERの…』
中崎の後ろに立っていた3人。1人ずつ名前を口にして、頭を下げる。
勿論、全員の顔と名前くらいは把握していた。今をときめく彼らを知らない人間の方が少ないだろう。
リーダーである、八乙女 楽が一歩前へと出る。
「よろしくお願いします。素敵なホワイエですね」
周りを見渡して言う。
「はは、お褒め頂き嬉しいですよ。ここ ホワイエは、音楽を聴きに来たお客さんが、外観の次に目にする場所ですからね。
これから耳にする音楽への期待感を高めてもらう為にも、気合いを入れてデザインして貰ったんですよ」
嫌味なくらいの色男は、目を細めた。
「素敵な考え方だと思います」
私達は、連れ立って歩き 早速ホールへと移動する。既に機材等の搬入は済んでおり、きっとすぐにでもリハが開始されるだろう。
「どうでした?東京、福岡、名古屋でのライブは」
『お陰様で、成功を収める事が出来ました』
他愛の無い会話をしながら、その後の話に入る。
「すぐにやります?」
『ぜひ』
わざわざリハの為に今日一日ここを押さえたのだ。時間を無駄にはしたくないだろう。当然の判断だ。