第3章 今の寝言は、特別に…聞かなかった事にしてあげる
そして、約束の日はやって来た。
彼が新曲を作る上で、自ら設けた締切日。
結局 ボク達と約束を交わした日から、1日足りとも帰宅していないのだと姉鷺は言っていた。
しかし、どれくらい努力したとか。あんなにも頑張ったとか。
そういう考え方は嫌いだ。要は、結果が全て。まぁおそらく、彼もそういう考え方の持ち主だとは思うが。
どちらにせよ、今日 結果が出る。
彼が…本物か。偽物か。
「……で?アイツはどこだよ」
「楽聞いてないの?」
「聞いてない」
「俺も知らないな」
…まさか、3人揃いも揃って待ちぼうけを食らうとは…。
「とりあえず、防音室行ってみる?」
「…そうだね」
「まだピアノ必死で弾いてたら笑えねぇな」
ボク達は、ピアノが置かれてある防音室へと向かった。
そこに、彼は いた。
『…………』Zzz…
気持ち良さそうに、椅子に腰かけたまま眠り込んでいる。
「…お、おい、寝てる場合じゃねぇだろ!」
「急がないと!きっと社長達も待ってるよ!」
「待って。2人とも。多分…大丈夫だよ」
慌てる2人を制する。
そう。きっと曲は出来ている。眠りについている彼の手に、楽譜と…デモCDがあったから。
ボクは、出来るだけそっと それらを彼の手から抜き取った。
そこに記されていた曲名は…
「え、これって…」
「はっ。正気じゃ、ねえな!」
「曲名が、…Black & White」