第19章 こんなにも好きなのに酷いじゃない?
「名古屋飯と言えば!?」はいはい!
「ひつまぶし?」
と、楽。
「手羽先!」
と、龍之介。
「きしめん」
と、天。
と、いうより 早く出て行ってはくれないだろうか。何故 人の部屋で急に古今東西ゲームのノリを始めているのだ…。意味が分からない。姉鷺のテンションの高さがもはや異常。
「春人ちゃんは何が食べたいの?特別に、アナタが選んでいいわ」
急にそう言われると、悩んでしまう。そもそも、私の参加は強制なのだろうか。
とりあえず、名古屋名物の食べ物を答えなければ。
『えっと…、あ。
かけてみそ つけてみそ』
「だっから!!なんでアンタはそう、何でもチューチューする物ばかり選ぶの!そんなカロリーの摂取方法は認めないわよ!?」
どうやら、お気に召さなかったらしい。
「ね、ねぇ 楽、天。かけてみそ つけてみそって、何?」
「「さぁ」」
『とりあえず、今は鰻も手羽先も、ちょっとパスで』
こってりした食べ物を考えただけで、胸焼けが起きそうだ。
「じゃあ、そのパスを パスよ!」
『は?』
なんだその最強の攻撃呪文は。
「諦めろ春人。姉鷺さっき、個室の店予約してたからな」
『えぇ!』
「そういうこと。はなからキミの参加は決まってる」
『えぇ?』
「手羽先が有名な居酒屋さんだってさ!楽しみだよね」
『えぇ…』
「あ、そろそろタクシーが来る時間だわ。ほらちゃっちゃと降りるわよー」
抵抗の努力虚しく、結局私は彼らと共に夜の名古屋の街へと繰り出す事になったのだ。
ロビーに降り、自動ドアを開けて外に出ると 既に2台のタクシーが到着していた。
楽と龍之介と姉鷺が前方のタクシーに乗り込む。と いう事で、私は天ともう1台のタクシーで向かう。
私は天を運転席の後ろに乗せ、自分はその隣に座る。そして、行き先を告げる。
『…ヤマちゃんの 世界へ』
「すみません。間違いです。世界のヤマちゃんへお願いします」