第19章 こんなにも好きなのに酷いじゃない?
ジャージの中を、汗が伝って気持ちが悪い。そう思っていたところに、ちょうどタオルが差し出される。
「お疲れ様。どう?いい振りは降りて来た?」
天からそれを受け取り、私は早速汗を拭う。
『…まずまずです』
「春人くんのまずまずは、上々。って事だよね」
たしかに龍之介の言う通りかもしれない。駄目だった時は、素直に良くなかった。と言う気がする。
「でも、なんでこのタイミングで 新しい振り付け考えてるんだ?仮に今 良いのが思い付いても、明日からのライブには使わないだろ。さすがに」
楽の言う通り、今回のツアーでは新しい構成のダンスを取り入れるつもりはない。
『はい。考えていた物は、次の新曲用です。
ですので急に、これを明日踊って下さい。なんて無茶は言わないので安心して下さい』
「「「当たり前だ!」」」
では何故、このタイミングで振り付けを考えていたのかと言うと…。
『もしかしたら…、明日からのツアーが楽しみ過ぎて 体を動かしたくなっていたのかも、しれません』
「…何それ。落ち着かなかったってこと?」
「あはは!春人くん可愛いね」
「はは!お前でもそんなふうに思う事あるのかよ。っつか、遠足前夜の小学生みたいだな」
やはり、言わなければ良かった。と、軽い後悔を覚える。
そんな私に、天が言う。
「でも、気持ちは分かるよ。
ボクも 明日からのライブが楽しみで仕方ないからね」
そう言った彼を 2人とも見上げて、笑って頷いた。