第19章 こんなにも好きなのに酷いじゃない?
ドタっ、
バターン!
ズベーン。
「あの人が振り付けを考えてる光景って…異様だよね。いつ怪我するかってハラハラする」
天が心配してくれているが、その声は私には届かない。
「めちゃくちゃ派手にコケてるように見えても、ちゃんと全部受け身取ってんだよな。凄過ぎるだろ」
楽のお褒めの言葉も。集中モードの私には届かない。
「あぁやって、あえて自力で支えられない所まで一度 体を持っていくんだって。そこから微調整を繰り返して、ギリギリ体を保てるポイントを探してるらしいよ。
このテンポなら、どこまで体を捻れるか。あの姿勢からなら、どこまで高く跳べるか。
自分の限界を見つけるには、まずは振り切るまでやるのが近道なんだって。前に春人くん言ってたな」
以前、話した内容を覚えていてくれたのであろう龍之介が、2人に説明している。
「そうかよ。まぁ理由聞いてもしっくり来ねぇな。普通の人からすれば、どう見たって ただ転げ回ってるだけだぜ」
「普通の人、か。たしかに、あの非凡からしてみれば…周りは大抵、平凡だろうね」
私がここまで気合を入れているのには訳がある。明日から、TRIGGERのライブツアーが始まるのだ。
東京、福岡、名古屋、大阪 の順に回る。各地に2日間 滞在し、公演は1日1回。なので、4箇所で計8回のライブを行う。
チケットは既に全日ソールドアウト。特に大阪で行うファイナルステージは、販売とほぼ同時に全てのチケットが捌けた。
今、TRIGGERはノリに乗っている。この全国ツアーも必ず成功させ、さらに彼らの地位を格上げしたいところ。