第1章 もしかしなくても、これって脅迫ってヤツですか?
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『ミクー!お疲れ様。今日のライブも最高だったよー!』
「エリさん!ありがとうございます!」
私は舞台袖で待機していて、たった今ライブを終えたばかりの彼女を抱き締める。
二人して控え室へ戻ると、タオルで汗を拭くミクと反省会。
『2曲目終わった後のMC面白かったよ』
「ほんとですか?えへへ、嬉しいですっ」
彼女は、いま私が育てているアイドル。可愛くて可愛くて仕方がない。いくらだって推せる。
推しのアイドルが、仕事とはいえ 私の作った曲を歌い、私の用意したステージで踊る…。
こんなに幸せな事があるだろうか。
自分がそこに立てれば……なんて、決して思ったりしない。
コンコン
と、部屋にノックの音が響く。
私はすかさず立ち上がり、ゆっくりと扉を内に引いた。
そこには、このライブの影の功績者が立っていた。
いわゆる…スポンサー様だ。
『あ、お疲れ様です。この度は、大変お世話になりました』
「いいんだよ!いやぁミクちゃん凄い可愛いし歌も踊りも上手いし!このままトントン拍子に登っていくだろうね!
いやぁ、いまのうちに独占契約お願いしちゃおうかな」はは
『ありがたいお話です。そのお言葉が社交辞令でない事を、切に願いますよ』
私は楽屋にミク1人を残し、彼と廊下へ出るのだった。