第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
——楽は、はたして良い夢が見れただろうか。
車窓から流れる景色を見ながら、思う。
彼が、たとえ ほんのひと時でも Lio と過ごす時間を、疑似体験出来ていたなら嬉しい。
想い人の、代わりになる。それくらいが、せいぜい今の私に出来る事だった。
私は、常に楽の側にいるけれど、それは仲間として。春人としてだ。
Lio として彼の前に立つ事は…きっと二度とない。
楽が本気で Lio を愛していると知っていて、こんな無情な決意を固めている私は、なんて残酷。
その時、最近読んだ小説の一節を思い出した。
“ 何も罪を犯さないなど、どだい無理な話。
それならばせめて、それを隠しておく事を
私達は 誠実 と呼ぶ事にした ”
たしかこんな内容だった。その解釈に則って考えるならば、私はなんて…誠実なのだろうか。
言わずもがな、嘘をつき通し続けるのは容易ではない。自分で決めた事とは言え、辛く苦しい道のりだろう。
私はもしや、彼に泡沫の夢を見せる事で 少しでも自分が楽になりたかったのか?
それとも、与えられた甘い言葉にまんまと酔わされ、楽にくらりと きただけなのか?
いっときの夢を見たかったのは、もしかして…私の方か?
いや…どちらだったにしても、それはもう些細な問題でしかない。
もっと重要なのは他にある。
“ 夢 ” は、終わりがあるから “ 夢 ” なのだ。
“ 夢 ” は必ず、覚めるもの。