• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第18章 あれ?俺って…アイドルだよな




胸の高さまである波に襲われたというのに、エリは平然と同じ位置に立っている。

すっ転んだのが俺だけという事実が、さらに悔しさを倍増させた。


『足腰、弱いんじゃないの?』


彼女は腰を曲げ、尻餅をついたままの俺に手を差し出す。


「お前こそ、どんな体幹してるんだ」


悔しさを噛み殺しながら、その手をとった。


『ふふ、びしょ濡れ。特に楽』

「お前も大差ないだろ」

『私はほら、ここから上は慣れてないし。セー』


ぽた。ぽた…と、今度は頭上から水が降ってくる。


『フ…。って、…え?』


エリは、まさかの事態に天を仰ぐ。


「……嘘だろ」


嘘ではなかった。突如として、今度は雨が俺達を襲う。
初めは水滴が、様子を見るように落ちてくるだけだったのだが。徐々に勢いを増し、スコールのような雨に変わる。


『っ、あはは!なにこれ!空、超晴れてるのに凄い雨なんだけど!凄いね!』

「笑ってる、場合じゃねえだろ!」


既にびしょ濡れの上着を エリの頭上にバサっと被せ、その腕を引く。そして屋根のある場所を目指して走り出す。


「走れ!もうこれ以上濡れるのはごめんだぜ」

『あはは!ほんと酷い!これも楽の日頃の行いが悪いせいだね!』


走りながら、そんな憎まれ口を叩くエリ。


「あーそうだな。悪かった悪かった」


きっと、彼女の言う通りだ。
好きな女の代わりを、他で間に合わせようとした男には、天罰が下って当たり前かもしれない。


『…ううん。ごめん、本当に日頃の行いが悪いのは、私の 方』


彼女の小さな呟きは、雨の音にかき消された。

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp