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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第18章 あれ?俺って…アイドルだよな




腕の中で、小さく身を揺らして笑うエリに、引き続き気持ちをぶつけていく。


「さっき言った事も、多分俺の本心だ。でも、お前の事が…愛おしいって。可愛いって思ったのも事実、だからな」


情けない話だ。愛おしい、も。可愛い、も。今まで掃いて捨てるほど言ってきたというのに。
それらが全て、今この瞬間の為の予行演習だったように感じてしまう。
俺はいつから、こんな純朴な男に変わってしまったのか。


『楽…、ありがとう』


腕の中に閉じ込めたエリが、顔を上げて 俺を見つめる。その照れたみたいな はにかむ表情に、まさに心臓を撃ち抜かれる。


「っ、」


弾かれたように、俺は彼女の顎先を掬う。それから少しだけ上へ持ち上げる。
一瞬、エリは驚いたように目を見開いたが。その後ゆっくりと、長い睫毛が伏せられた。

徐々に、腰を折って彼女の顔との距離を詰めていく。赤く艶やかな唇しか、もう目に入らない。

ザザザ、と、足元の波が 引いて引いていく。ぐしゃぐしゃに濡れた靴も何も、気にならない。

俺はただ、エリの 唇が欲しい。



バッサーーーン!!


「………」

『………』


波が、俺達を引き裂いた。

今までの動きからは考えられないほど、大きな波が突然襲って来たのだ。その衝撃に、大きく体勢を崩す。


「…ありえ、ねえ」


結果、俺達は胸くらいの高さまで ぐっしょりと海水で濡れた。いや、そんな事いまはどうでもいい。体が濡れるくらいは、どうって事ない。

最も問題なのは…
エリとのキスの機会を逃したという事実!


「く、…っそ!!

海の馬鹿野郎ーー!!」

『あははは!!言った!結局 楽も言った!!』


腹を抱えて笑うエリの笑顔を見られた事だけが、唯一の救いに思えた。

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