第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
とにかく、エリは Lio ではない。
では何故、俺の心はこうも揺れるのか。
俺を目の前で失いそうになり 怖いと震えた彼女を見て、情が湧いてしまったのだろうか。
それとも俺は…
少し顔が似ているからと、勝手にLioの影を重ねて 寂しさを埋めようとしているのだろうか。
どちらにしても、最低な事に違いはない。
『楽。さっき襲って来た女の人、そのまま行かせちゃって良かった?
普通は警察に通報したりするんじゃないの?』
隣から飛んできた質問で、我に返る。
「ああ…それは」
どこから説明したものか、と頭をひねる。
「TRIGGERの、俺達のプロデューサーな。そいつが物凄い馬鹿な奴で」
『………へえ』
「?
何でお前が腹立てるんだよ」
『別に』
エリの反応に引っかかったが、話を続ける。
「仕事馬鹿で、TRIGGER馬鹿で、愚直で、無駄に責任感強くて。
だからもし、さっきの事が あいつの耳に入ったら…
きっとあいつは、自分を責めるんだよ」
春人のことだ。どうせ、自分がこんな企画を考えたせいで。とか、自分の予見が甘かったせいで俺が危ない目に合った、とか。
勝手に思い詰めるに決まってる。
責任感が強過ぎるのは考え物だと、以前から思っていた。
自分一人で全てを背負い込む癖がついてやがる。
一体何が、アイツをあんなにも孤独にしたのか。それを知るには、俺達の距離は まだ遠いのかもしれない。
『へー…へー!へーぇ。じゃあ楽は、そのプロデューサーの事が大好きなんだ?』
「な、なんっ」
さっきとは反転、心の底から嬉しそうな顔で俺を詰めてくるエリ。
「まぁ…大事な仲間。では、あるな」
『そっか。…ふふ、そっか!』