第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
『でも、私そこそこ強いし。大丈夫だと思っ』
「強いとか強くないとかじゃねえだろ。
あんな危ない場面で、女が男の前に立つなって話をしてるんだ!」
『は?なにそれ!男女差別!』
「何て言われたって良い。お前が…っ、怪我するところだったんだぞ」
『っ、』
今、そんな顔をするのはずるい。そんな、泣きそうな 痛そうな顔…。自分だけ、言いたい事を言ってしまう楽は、ずるい。
「俺のせいで、お前が怪我したら…どうするんだ」
それは、違う。彼は何も分かっていない。何も知らない。
この事件は、楽のせいなどではない。
全て、私のせいだ。
私が、こんな企画を発案しなければ。アイドルを想うファンの心を、本当の意味で理解出来ていなかった。
あの女性の引き金をひいたのは、私なのだ。
「俺が、どれだけ怖かったか エリには分からないだろ…っ」
再び、楽の顔が悲痛に歪む。
『そんな…の、楽だけじゃないでしょ、私だって!』
生まれて初めて、大切な人を失うかもしれないという恐怖を味わった。
今でも、瞳を閉じれば 楽が刺される瞬間の映像が流れてしまう。
彼らTRIGGERの事を、ただの仕事上でのパートナーだと割り切っていれば…きっと、もっと淡々とさばけたはずだ。
いつの間に、彼らは私の中で こんなにも大きな存在となっていたのか。
このままでは、いけない。やはり、踏み込み過ぎてはいけなかった。今からでも ビジネスライクな関係に戻るべきだ。
そう、分かっているのに。
きっともう手遅れだ。
私はもう、彼らから離れられない。
一度近付けてしまった心は もう引き離す事は出来ないから。
それくらいに、私はもう 3人が大好きなのだ。