第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
やがて、その場も落ち着きを取り戻し始める。
私と楽は、女を連れて その場から離れ。ゲームセンターが完全に見えなくなった辺りで彼女を解放した。
警察に突き出される事もなく、それどころか楽の優しさに触れた彼女。もう完全に敵意はなく、最後には 反省する姿さえ見せていた。
『さっきの機転は、素晴らしかったね』
「あんなのは、ただの… “ ある男 ” の真似事だ」
“ ある男 ” か。誰の事を言っているのかは、あえて聞かなかった。それよりも、気のせいだろうか?楽がなんだか、怒っているように感じられるのは。
『………』
「………」
駐車場へ向かう道中も、こちらが話しかけなければ彼は口を開かない。どうやら思い過ごしではないようだ。
『ねぇ。何か、怒ってるの?』
「……車の中で話そうかと思ってたが。俺も我慢の限界だからちょうどいい。
ちょっとこっち来い」
かなり強い力で腕を掴まれ、そのへんの路地裏に連れ込まれる。それに、彼はかなり苛立っている様子だ。
腕を離すなり、楽は私を路地裏の壁に追いやった。そして両手を私の横に突いた。そんなふうに私の逃げ場をなくしてから、彼は強い目で私を睨む。
『…なに』
「どうしてあの時、俺を庇おうとした」
彼が怒っている理由が、なんとなく分かってきた。
『楽はアイドルなんだから、顔とか体に傷作っちゃ駄目でしょ』
「馬鹿野朗。俺はアイドルの前に、男なんだよ」