第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
『私、そこにあるホームセンターで、ちょっと針金買ってくる』
「はあ?針金?」
私は、たった今思い付いた天才的な案を彼に伝える。
『1メートルぐらいの硬めの針金を、こーんな形にしてさ』
私は、人差し指で “ し ” を引っくり返したような図を空中に描いてみせる。
「…おう。その形の針金を?」
『……出口から突っ込んで、ぬいぐるみを引っ掛けたら 簡単に取れるくない?』
「いや それ普通に犯罪だろ!ぬいぐるみ欲しすぎて変になってるぞ、帰って来い!」
プレイ中だと言うのに、私の方へ向き直ってツッコミをくれる楽。
『ああ楽!前見て!』
「あ、やば」
動き続けていたアームを、②のボタンを咄嗟に押して 止める。
『もう、真剣にやらないと、取れるものも取れない……って、あれ?』
「!」
変なところに行ってしまったと思ったアームは、意外とぬいぐるみの近くに降下していく。
そして、なんと左のアームにぬいぐるみのタグが引っかかったのだ。
さらに行方を見守っていると…。今までビクともしなかったぬいぐるみが、見事に宙に浮いたではないか。
『ちょ!楽っ、これ…』
「ああ、予想外だ…」
なんと、ぬいぐるみをタグで持ち上げたまま、落とす事なく出口へと運ぶ。
やがて、ついに…。
出口の上で、アームがぬいぐるみを離した。
ガコン。という音と共に、景品が降ってくる。
『や…やったー!楽っ!凄いね!取れたよ!』
「長かった…」
私と楽は、周りの目も憚らず ハイタッチを交わすのだった。