第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
Wonder Wonder Land。幅広い女性層から支持を得ている、今や大人気のソーシャルゲームの名前だ。
その中でも、最も人気を博しているのが ウツボ兄弟。ちなみに、私の推しでもある。
その、ウツボ兄弟の特大ぬいぐるみのクレーンゲームが…今、目の前にある!!
『こ、こんな入り口に、ウツボ兄弟のユーフォーキャッチャー、最初からあった!?うわぁ、絶対欲しい…』
私はパネルに張り付いてぬいぐるみを眺める。
「俺は、ウツボに負けたのか…?
まぁいいけどな…よし。任せろ。これは俺が絶対獲ってやる」
『楽様っ…』
私は胸の前で手を合わせ、祈るようなポーズで楽を見つめた。
あぁ、もう少しでこのウツボ兄弟が 私の物に…!
しかし…。
「…………」
『…………』
見事に、アームは空を切り続けていた。
両替。という単語を、私は彼からもうすでに10回は聞いた。という事は…
もう、一万円以上注ぎ込んでいる。
『……楽、もういいよ…』
「ここまで来て諦められるか!」
『いや、自分で獲るって言おうとしたんだけど』
「よ…余計に駄目だろ、それは…」
ガックリとうなだれる楽。どうしても自分で獲って、私にプレゼントしたいらしい。これが男の意地というやつなのだろうか。
はたまた、楽のプライドが高いだけなのだろうか。
でも、私の為に 一生懸命に挑んでくれている横顔には、正直ちょっと グッと来た。
テレビの前では、ひたすらにクールでカッコ良い楽。そんな彼が、今はユーフォーキャッチャーのパネルに額が付きそうなほど必死になって、頑張ってくれている。
例えぬいぐるみをプレゼントされなかったとしても、こんな彼の横顔が見られただけで。十分 私は嬉しいのだ。