第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
楽から手渡された、ウツボ兄弟のぬいぐるみ。私は思わずぎゅっと抱き締めて 頬をすり寄せる。
『嬉しい!楽、ありがとうっ』
「!…エリ その顔…本当にちょっと似て…
まぁ、今はそれはいいか。お前が喜んでくれて、良かった」
ふいに 彼の手が頭に近付いてくるのを感じて、あぁ 頭を撫でられるのかな。って思ったら なんとなく目を閉じていた。
しかし、触れられる事はなかった。
その場に、異様な叫び声が響いたのだ。
「触らないで!!その、女にっ…触らないで」
それ叫びが、私達に向けられ発されたのだと 理解するのに少し時間を要した。
しかし “ 彼女 ” は、たしかにハッキリとこちらを向いている。
私は、彼女を確認した後に楽を見上げる。
“ あの人は私の知り合いでは無い。では楽の知り合いか? ” という意味を込めて彼を見たのだ。
その意図は汲み取られたようで、楽は私を見下げて首を振った。
私達の混乱を他所に、彼女は言葉を続けた。
「どうして、私じゃ、ないの?楽…、私は、こんなにも貴方を…、CDだって、200枚も買ったのに、なんで…どうして」
断片的に紡がれる言葉を繋ぎ合わせると、徐々に意味が分かってくる。
どうやら、楽のファンのようだ。そして 彼とのデートが目的でCDを買ったが、当たりはしなかった。
いや、というか彼女はいつから私と楽を見ていたのだろう。もしや、ずっと尾行でもされていたというのか。
ゆらゆらと体を左右に揺すりながら、近付いてくる女。
「…ごめんな。とりあえずちょっと落ち着い」
「本当なら!!そこにいたのは…、楽の隣に立っていたのは、私だったのに!!」
発狂しながら、ポケットに手を入れた女を見て。私の中に戦慄が走る。
『!』
(あぁ、やばいな。これ)
私は女を刺激しないように、ゆっくりと楽の前へ体を移動させた。