第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
私と楽は、無事にゲームセンターの出口までやって来た。そこでようやく、彼は手を離した。
しかし、問題はまだ何も解決していない。彼の手には、未だ私の眼鏡が握られているからだ。
『返してっ、眼鏡!それが無いと、1メートル先も見えなくて困る!』
「嘘付くなよ。伊達だろこれ」
再び、ぐいっと楽の顔が近付いてくる。
「なぁ、エリ。さっきみたいに、笑ってくれよ。
さっき踊ってた時みたいに。楽しくて、仕方がないって顔して…」
ヤバイ。まずい。やり過ぎた。どうしよう。
私が、Lio だとバレる!
『ちょ、楽!近っ』
頭の中のパニックが、最高潮に昇った時。気が付いたら…
ボディブローをキめていた。
『顔近いってばぁ!』
「ぐっ、!」
『あ、ごめん』
とりあえず、その時に眼鏡は無事に確保した。
「な、…お前、なんで」
『え、いや、だって楽はアイドルだから、顔はまずいと思って』ボディブにしといた
「そういうことじゃねえよ!」
ついつい手が出てしまった。という感じなので、手加減が出来なかった。それは見事な抉りこむようなボディブローであった。
『ごめんって!でも楽が、眼鏡取り上げたり意地悪するから。あと顔 近過ぎ』
「…たしかに、それはそうだな。悪かった。お前嫌がってたのに」
楽は、心から反省しているように 下を向いた。
どうしてもこれ以上彼を責めるような言葉は出てこなかった。
何故なら、楽が、どうしてここまで必死になるかを 私は知っているから。
きっと、どうしても会いたいのだろう。どれほど薄い望みだと分かっていても、それに縋りたいのだろう。
それほどまでに、Lioが愛おしくて 仕方がないのだ。