第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
「俺にそこまで言ったんだ。次はお前の番だよな?」
『もちろん!人のゲームプレイ見てるだけなんて、そんなつまらないもの無いからね』
私は画面をタップして、難易度を最高まで引き上げる。
プレイ自体は久しぶりだが、こういうのは大概 体が覚えてくれているものだ。
このゲームのコツは…、矢印を踏む事だけに集中し過ぎない事。上手く上半身も使ってやると、本当にダンスを踊っているように見える。
「!!」
さらに、ジャンプ、ターンなんかも入れて…。着地のタイミングも見計らい、両足でしっかり矢印を踏む。
『あはっ!ヤバイ、楽しいっ』
《 perfect!Full Combo!! 》
キラキラなエフェクトと共に、その文字が盤面に出て来る瞬間は最高だ。
『見てた楽!?フルコンボ!』
ぴょん!と跳ねてステージから着地した瞬間。既にズリ落ちかけていた眼鏡が、地面に落下してしまう。
ヤバイ。と、私はすぐに落ちた眼鏡を拾うため、体を屈める。
しかし、目の前から眼鏡が消える。なんと、私よりも素早く楽が眼鏡を拾い上げたのだ。
『か、返して!』
出来るだけ、彼の前では素顔を晒したくはない。
しかし、2人とも屈んだ姿勢。至近距離で視線が合い続ける。
「エリ…、あんた…」
「お姉ちゃんすごーい!!」
「『…え?』」
突如聞こえてきた、少年の声。私と楽は屈んだまま、視線だけ声の方へと向けた。
なんとそこには…、いつの間にか凄い数の人集りが出来ていた。
「『!!』」
少年の声を皮切りに、拍手やアンコールなどが起こり始めてしまったではないか。
『え、いや、えと、』
「っ、走るぞ!」
楽は瞬時に私の手をとった。そしてその場から逃げ出した。
「ったく!お前がギャラリー集めてどうするんだ!」
『不可抗力じゃない!?』
2人して、ゲームセンターの中を駆け抜けるのだった。
そんな私達を、憎しみの感情を持ち 睨み付けている存在がいる事など…。
この時は、まだ知らない。