第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
「うま」
『でしょ?』
良い男は、ハンバーガーを食べる姿も絵になると今日知った。
「俺、女とこんな場所に来たのは初めてかもな」
『へぇ。やったー!楽の初めて、戴きました』
あはは、と笑う私の口元を、ふいに楽の親指が撫でる。
「ソース。ついてた」
そう言って彼はなんと、自分の親指の腹を ペロリと舐め上げた。
『な、なん』
なんて事をサラリとやってのけるのか!この男は…
「女って普通、もっと高級レストランとか…そういう 特別な場所?に行きたがるもんだろ」
『あ、あぁ…まぁ、そういう気分の時もあるけど、今日はこれが食べたかっただけ。
っていうかさ、この店のハンバーガーって、たまに無性に食べたくならない!?前から思ってたけど、もしかして何か中毒性のあるもん入ってたりして…』
なんだか気恥ずかしくて、それを誤魔化す為に 捲し立てるように喋った。
「はは!そんなわけねえだろ!なんだお前、ほんと変な奴だな」
『うわ、面と向かって悪口!』
「褒めてるんだろ。安上がりな女だなって」
膨れっ面の私に、彼は更に悪口を重ねるのだった。
『いやそれ全然褒めてない…。
悪かったねー、安上がりで変な女で!じゃあ一体 楽は…どんな、女の子が好きなの?』
どうして、そんな質問をしたのか。自分でもよく分からない。こんな事を聞いても、彼を困らせてしまうだけなのに。
「………」
案の定、楽は何も答えなかった。ただ、綺麗な形の眉を少し寄せて、寂しそうに笑った。
誰の名前も口にはしなかった彼だけど、今頭の中には 私の、Lioの顔が浮かんでれば良いのにな。なんて、考えてしまう自分は…
どうかしている。
「まぁ少なくとも、デートでハンバーガーを大口開いて食べるような女でない事はたしかだな」
『…楽は意地悪だ』