第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
黄色いMの字をシンボルに掲げ、皆んな大好きハンバーガーショップと言えば…。その場所は 1つしかないだろう。
「おい…」
『私が買ってくるから、楽はマスクと帽子で顔隠して、ここに座ってて』
私は彼を席に座らせて、カウンターへ向かう。
楽に頼まれた期間限定のバーガーセットと、自分のてりやきセットを注文する。
ものの数分で全ての品が出揃うのだから素晴らしい。この徹底されたクイックサービスには、毎度驚かされる。
楽の周りに人が集まっていたらどうしよう。と思っていたのだが…店内の隅のテーブル、そして壁に向かって座っていたおかげで それは杞憂に終わった。
『はい。お待たせ』
「サンキュ」
ちなみに…、食べ物を1番美味しく食べるコツは ルールを守る事だと私は考えている。
フランス料理なら、無駄に広い部屋で ナイフやフォークを仰々しくカチャカチャやって 時間をかけて食べる。
逆に、フレンチをガヤガヤとやかましい場所で、立って食べたりなんかしても 全く美味しく感じないのだ。
ちなみに…
ハンバーガーを美味しく食べる秘訣は、熱々を 出来るだけ早く。しかも大口を開けてパクつく事。だと思う。私はその作法を絶対に守る。
それが例え
人気アイドルの御前であっても だ。
「…………」
『……なに』
てりやきバーガーに食らいつく私を、しげしげと見つめる楽。
「いや、美味そうに食うなと思って」
『そう?いやでも私、正直このチェーン店は てりやき一択だと思うよ?一口食べる?』
そう言って、私達は互いのバーガーを交換する。なんだかこんなやりとりは…デートみたいだ。