第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
「なぁ。1つ聞いてもいいか?」
前を見る楽の視線が、不安に揺れた。
「なんで、今日まで当選の連絡して来なかったんだ」
『…迷ってたから。ずっと。
私みたいなのが、皆んなの憧れである楽とデートなんて恐れ多くて。
でも、私はやっぱり貴方の大ファンで、ずっと応援してたから。どうしても会いたくて…結局 気付いたら体が動いてたの』
この言葉は、全部が本当じゃないけれど。
どうか伝われば良い。私は貴方の大ファンで、私以外にもたくさん楽のファンが、いるって事。
「…そうか。はは!なんか安心した」
楽は、本当に嬉しそうに 子供のようにくしゃっと笑った。
良かった。私はずっと、彼のこの顔が見たかったのだ。
「じゃあ、後悔させないようにしないとな」
『え?』
「迷ってたのに来てくれたんだろ。
俺がエリに、今日のデート 来て良かったって思わせてやるよ」
『うわぁ、いちいち格好良いな本当に』俺様ー
私の素直な感想に、また笑顔をこぼす楽であった。
そんな彼を見ていると、私も今日は自然体で楽しんでしまおう。という気になってくるから不思議だ。
敬語禁止令が、結果的に功を奏したのかもしれない。敬語ならば春人を連想させにくいだろうし、素の自分で押し通すのも良いかもしれない。
そう決めた瞬間、まるで体がそれを理解したように、お腹の虫が小さく鳴いた。素を出すにも程がある!
「なるほどな、お姫様は飯をご所望 と」
『そこは聞こえないふりをするところ』
「まぁいいだろ。俺も腹減ったし。
何が食いたい?好きなのでいいぜ」
天や龍之介の時は、レストランを予約してあったのだが。今日の場合は決行が急だった為に、どこも押さえていないのだ。
しかし、急に何が食べたいかと聞かれても…
『あ』
その時。私の視界が、黄色いMの字をした看板を捉えた。