第18章 あれ?俺って…アイドルだよな
チン。
という音と共に、エレベーターは1階に到着。
1歩踏み出しつつも、私はまだ頭の中で思考を続けていた。
普通に考えれば、私が購入したCDの中に当たりが入っていたと正直に話すべきだ。そして、彼に誠心誠意謝罪する。これで解決ではないか。
なのに、何故 私は…。
『!!』
ロビーに、楽はいた。
彼を、視界に捉えた瞬間。ぐちゃぐちゃ考えていたものの答えが、すとんと出てしまった。
『……』
(あぁそうだ。ここ最近、楽の悲しい顔をずっと見ていたから…。
私はただ、彼に 笑って欲しかったんだ)
ちゃんと、貴方のファンはここにいる。決して天や龍之介のファンだけじゃない。貴方とデートをしたい人間はここにいるのだと。
それを伝えたいと思ったら、勝手に体が動いたのだった。
自分の中で答えが出ててしまえば、心がスッキリとした。
少し離れたところに立つ彼、がチラリと腕時計を確認している。
白いシャツに、黒のジャケット。足元は細身の黒のジョガーパンツ。なんともスタイリッシュなスタイリング。モノトーンでもハードに見えすぎない。
はっとするくらい美しいシルエットだ。
『っ、』
私服なんて、見慣れているはずなのに。なんだろう…これから あの美しい男とデートをすると思うと、動悸が!
まさか、楽と出掛けるだけなのに 私…緊張している?
「……!」
じぃっと見つめ過ぎたせいか、楽の切れ長の瞳が こちらを向いた。
『!!』
すらりと伸びた足で、1歩、また1歩と こちらへ近付いてくる。