第17章 光栄の至り
「え、何かって…」
「何だよ」
『…もしも、の話ですよ。お相手がナイフでも取り出して
“ 私だけの物になってくれなきゃ殺してやる! ” って言い出すかもしれないでしょう』
至って真面目な顔で言う。
「怖いな」
「まぁでも、ありえない話じゃないよね」
「でも、そうなれば春人くんが危ないじゃないか!俺達を庇って刺されでもしたら」
本気で私を心配する龍之介。
『大丈夫です。私はそこそこ強いですから。
それなりの訓練も受けてますし』
「「「何の訓練」」」
『とは言え、そんなのはレアケースです。ほぼほぼそんな事態には陥らないでしょう。持ち物検査も実施しますし。
ですので安心して、女性をエスコートして下さい。
それと、私は当日 カメラマンも務めます。撮った写真は、お相手へのプレゼント。あとは 本企画のまとめとして デート内容をうちで特集しますので 、それに使用します』
「相変わらず抜け目ねえな」
当日は、女性が八乙女事務所に直接やって来てくれる。そこからデートのスタート。
その日のデートプランは、各メンバーが考える。彼らがどのようなデートコースをプランニングしてくれるのか、というのも本企画の醍醐味である。
『ちなみに、お触りは禁止してありますのでご安心を』
「お、お触りって…」
「キャバクラみたい」
「手も繋がないようなデートか。それってただの、お出掛けじゃねえか」
キャスター付き椅子の上で、不満そうに語る楽。
「楽はデート内容云々の前に、その相手すらいないじゃない」
テーブルに肩肘をついて、また天が楽をからかった。
「なっ、な… にも、言えねぇ」
「楽…」
ガックリと肩を落とす彼の背中は、なんとも言えない哀愁が漂っていた。
プライドの高い人気アイドルの楽を、ここまでガッツリと凹ませている女性は…今頃どこで 何をしているのだろうか。