第17章 光栄の至り
翌日。翌々日になっても、楽の相手だけは一向に名乗り出ては来なかった。
「…………」
楽は当然、この上なく不機嫌なご様子。
『私も、この事態は予測していませんでした。1つ危惧しているのは、転売の可能性です。
貴方とデート出来るとなれば、100万円の価値が付いてもおかしくはない、と 私は思いますよ』
「珍しく春人くんが楽にフォローを…」
しかし、粗方そういうサイトはチェックしたが、それらしいものは出品されていなかった。
まぁまだ締め切りまで時間はあるが。一体 何が起こっているのだろうか。
「ボクか龍のファンが、間違って楽のブースに並んじゃって当たり引いたんじゃないの?
でも相手が楽だったから、いらないと思ったのかも」
「……はぁ?」
『天、滅多な事を言うもんでは無いですよ。ほら、楽にごめんなさいして下さい』
「お前、めちゃくちゃ顔が笑ってるの自分で気付いてるか?」
「ああもう、喧嘩するなよ!な!」
しかし、冗談抜きで楽が可哀想に思えてくる。まさかこんな展開が待っていようとは…。
『とにかく、決行日はもうすぐです。詳細を説明しておきますよ』
私はホワイトボードの前に立ち、事細かに話をする。
『まず、1日目は天。2日目は龍。3日目が楽です』
「3人同時日に行わない理由は?」
『私が1人しかいないからですよ。
言っておきますが、いくらデートと言えども 貴方達とお相手を2人きりにはしませんよ?』
それは当選者にも説明をし、承諾は得ている。
私の目の届かない所で、ファンと2人きりで時間を共にするなど、考えただけでも心臓が嫌な高鳴りをする。
彼らは人気アイドルだ。危害を加えられる可能性も捨ててはいけない。
『私が、必ず目の届く範囲にいて、何かあっても貴方達を守ります』