第17章 光栄の至り
他のブースにも、勿論 各メンバーが位置についてくれている。
「ごめんね。せっかくボクを選んでくれたのに」
「い、いいの!こうやって本物の天君に会えて、嬉しい」
「そう?ボクは…キミとデート。したかったな」
「〜〜〜っっ!!」死 ね る っ
…そこまでしろとは、言ってない。
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「ごめんね。CD…売り切れちゃって」
「いえ!あの、私本当に 龍之介さんの大ファンで!こ、これからも頑張って下さいっ!」
「ありがとう」
「じゃ、じゃあ、私はこれで」
「待って。
デート相手に俺を選んでくれて、ありがとう」
龍之介も、相変わらず上手くやってくれている。
今回ばかりは、彼らに助けられた。
自分の見通しの甘さを、思い知った。もっと色々なパターンを想定して用意すべきだった。
ほぼ人の居なくなった、ガランとした会場の天を仰ぐ。
『はぁ…』
情けない。
疲労感も相まって、ついつい下を向いてしまいそうになる。
そんな時。スーツの裾が、下にくんくんと引かれた。
『??』
振り向くと、30代くらいの女性が立っていた。
『あ…すみません。
実は、もうCDの販売は終了してしまったんです…。ですが、今ならTRIGGERのメンバーが、各ブースにて握手を』
私が説明を終える前に、女性は申し訳無さそうに手を振った。
「あ、違うんです。今日はCDを買いに来たわけではなくて…
それに、用があったのは この子の方で…」
女性が、視線を下げる。
不自然だったその動作に釣られ、私も彼女と同じように顔を下げる。
するとそこには…。
小さな、女の子が立っていた。