第17章 光栄の至り
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「10枚下さい!」
そんな声が、どのブースからも漏れ聞こえている。
まさに、文字通り飛ぶように売れて行くのだ。やはり皆んな、複数枚購入していくようだ。
私は行列を整備する為、今はブースから離れたところで動いている。
『押さないで下さい!前の方に続いて、ゆっくりお進み下さい』
見たところ、行列が1番長いのは…天だろうか。しかし、どのブースもそれほど大差はないようだ。
行列が落ち着いて来た。私も販売ブースの方へと向かう。
足を踏み入れたのは、天ブース。
『!!』
テーブルの上に、山のように積まれていたCDが、残り少ない!
『CD、もう裏には無いですか?』
「はい!ここにあるので全てです!」
忙しそうなスタッフは、目の前の作業に追われていて、残数にまで気が回っていないようだ。
私は目算で、残りのCDをザッとカウントする。
『……』
(残りは約、200枚)
急ぎブースを出て、並んでいるファンを数える。
『……』
(約100人。駄目だ。今までの売れ行きから鑑みると、どうしたって買えない人が出てしまう)
1人10枚購入すると分かっているならば、購入できるのは20人。残りの80人には謝罪すれば良い。CDは、前の方までで完売してしまいました。と。
しかし今回は、誰が何枚購入してくれるのか分からないのだ。1枚かもしれないし、100枚かもしれない。あと何人のファンが購入可能なのかは、分からない。推測が全く立てられない。
まさか10万枚を完売してしまうなんて…!私の読みが完全に甘かった。
いや、今はそんな事を言っている場合ではない。反省は後からだ。
先着10万枚との触れ込みはしているものの、せっかく並んでくれたのに、買えなかったという事態はまずい。
考えろ。彼女達を、どうやったら満足させられるか。