第17章 光栄の至り
そこからは、ひたすら企画を煮詰めて行く。
社長に許可は取った。色々と条件は付けられたものの、それらは何ら問題にならない程度のものだった。
とりあえず、用意するCDは10万と定めた。これだけ用意しておけば、当日売り切れる事は無いだろう。
まぁしかし保険はかけておくべきだ。先着10万枚と、各所に記載はしておく。
あとは場所の確保。ライブ会場は勿論、今回は別途 販売ブースを用意しなくてはならない。それも行列を見越した、広いスペースの確保が必須。
新曲披露は、2週間後だ。
今回は大規模なライブでは無い為、歌う曲も新曲を含めて3曲。いつものライブに比べれば、やる事も気を使うポイントも少ない。
TRIGGERメンバーには、新曲に向けてレッスンを続けて貰う。私は彼らのサポートをしながら 企画を詰める。
こうしているうちに、バタバタと時は流れ…
新曲披露、デートチケット付きCD販売 実施日。
いつもなら、彼らのステージは袖で確認するのだが。今日は物販の方に不安が残るので、私はそちらで待機する。
新曲の歌とダンスの仕上がり具合も勿論気にはなるのだが、そちらは後で録画を確認するとしよう。
微かに、彼らの歌声が耳に入って来る。
という事は、もうすぐに ここにファンが雪崩れ込んでくるだろう。
各ブースにはスタッフを十分用意した。私も常に動けるように体を空けているし、問題はないはずだ。
『では、皆さん。手筈通りに、よろしくお願いします』
「「「はい!」」」
楽ブースのスタッフにそう言い残すと、次は隣の龍之介ブースの様子を確認する為、私はその場を後にした。
「…あー、緊張する…!どれくらい売れるんだろ。完売しちゃったりして…」
「そういえば、お前ちゃんと1枚CD抜いたか?プロデューサーに頼まれてただろ」
「いっけね!忘れてた!あの人、製品版のCD絶対いつも1枚買うんだよなぁ。自腹で」
「な。几帳面な人だよ、ほんと。1枚くらいサンプルで貰っちゃえば良いのに」
「ま、そういう所が 色んな人に受け入れられてんだろうけど。とにかく思い出して良かったー」
「ほい。じゃあこれな。その空いた段ボールの中にでも入れとけ。間違っても売るなよー」
「サンキュー」
なんていうスタッフ同士の会話を、私は当然知る由もない。