第2章 …なぁ。俺達、どこかで会ったか?
俺は事務所を出て、わざわざ少し離れたコンビニで おにぎりを3つとスポーツドリンクを買う。
なぜ近くのコンビニで済ませなかったかと言うと、こんなところを天や龍之介の見られたら…。気まずくて死ねるからだ。
「…いやまじで…何やってんだ、俺は」
自分の行動が信じられない。
どうして俺は、親父が連れて来た 怪しくていけ好かない男の為にこんな事を…。
買った物が入った袋をしっかりと持って、また事務所へと引き返すのだった。
「………」
「………」
「………」
事務所には、同じようにコンビを袋をぶら下げた男3人が集結していた。
俺と天、そして龍之介は、互いに気まずい顔を突き合わせる。
そしてそんな俺達を、柱の陰から姉鷺が見ている。
「ぷっ、く、くく〜〜」全員っ、差し入れっ買っ
必死で笑いを堪えているつもりかもしれないが、ダダ漏れだ。
「まぁ、ここでこうしてても仕方ないよね」
「そうだね!3人で渡しに行こう!」
「はぁ…なんで龍はそんなに嬉しそうなんだ。意味が分かんねぇよ」
いや、それは嘘だ。龍之介の考えなら分かる。俺や天が、中崎に差し入れを持って引き返して来たのが嬉しいのだろう。
本当にこいつは…生粋のお人好しだ。まぁ、俺もここにこうして戻って来ている時点で、人の事は言えないが…。
「っ、くっ、ぷぷっ、あはは」わざわざ、帰ったとみせかけてっ、鉢合わせっ
…姉鷺の頭の中は、もっと分かりやすい。
俺達が、自分の思惑通りに動いているところを見て楽しんでいるのだろう。
笑い声を聞いてたらイライラして来た。こんな事なら、さっさと防音室の中に入ってしまったほうが、
ここにいるよりは幾分マシだろう。